私の友人Hは、学会員さんと結婚した妹を持つ。
私が元カレとの付き合いを明かし、「一番気になってるのは、学会活動に熱心なことなんだよね…」とうち明けたとき、
初めて、「実はうちの妹もね…」と教えてくれた。
私も、なかなか親しい人でもうち明けにくいことだったけど、
彼女の場合も、特に自分のことではないから、それまでうち明けづらかったらしい。
で、その時に聞いた話は、今でも胸にしこりを残している。
その話とは、こういうことだった。
Hとそのご家族は、特に学会に接触があったわけではないけれど、
周囲からの話や選挙活動のことに関することで、あまりいい印象を持ってはいない、という人たちだった。
そのご家族の末娘が、出会って恋をした相手が、たまたま熱心な学会の一家の息子さんだった、と言う状態。
はじめに妹さんの結婚話が出たとき、Hのご両親は、反対とまでは行かないまでも、
「学会員さんと非学会員の結婚では、苦労も多いと聞くから、
突っ走るんじゃなく、もうちょっとよく考えてからにしたらいいんじゃないか。
結婚後の生活にも、ましてや子どもにも関わることなんだから、
その辺までよく話し合って、将来のことまで考えてからにしなさい。」
と言って、少し期間をあけさせたそうだ。
そのことは、旦那さんの家族からしてみれば、「ちょっと、おもしろくない」ことだったらしい。
「学会と、学会員を、差別の目で見てる」ということらしい。
なんとかかんとか二人はその期間、いろいろ話し合い、気持ちを確かめ合い、
いくつかの不安を残しながらも結婚を再び決め、ついに両家の顔合わせが行われたそうだ。
なんと、その日の帰り。
旦那さんの家のご両親が、大きな交通事故に遭われ、
母親は即死、父親は意識不明の植物状態になってしまった。
Hの家族はみな、言葉を失ったそうだ。
なんとか、新しい家族としてお付き合いしていこうと思った矢先のできごと。
どうなぐさめていいか、どう接していいか悩みながらも、
とるものもとりあえず母親のお葬式にでかけたそうだ。
その時、聞いたのは、Hの家族には信じられない言葉。
「○○(母親)さんは、信心のおかげで苦しまずになくなられた」
「お悔やみ」とか「残念」いうような言葉はなく、全て「よかった」と終わる会話。
Hはその時、
「この不幸な出来事を、そう考えることで乗り切れるなら、悪くはないのかもしれないな。」
と思ったそうだ。
この考えで、一番辛いだろう今の時期を乗り越えられるのなら。
もちろん、「随分強引だな。こじつけだな。」とも思ったらしいが。
ご不幸があったので、一度話は流れそうになったが、
旦那さんはいきなり一人暮らしを余儀なくされ、精神的にも辛いだろうから、
Hの妹さんがそばで支えた方がいいのではないかと言うことになり、
結婚は3ヶ月後に早まった。
そして二人は結婚し、その1ヶ月後、父親も亡くなった。
このお葬式の時に、またもHが聞いたのは次のような言葉。
「○○(父親)さんが、末の息子が寂しがらないように、半年近くも生きていられたのも、
やっぱり日々の信心のおかげ。」
Hはその時は、ふと、
「この何でも信心に結びつけて『よかった』という考え方、
学会員同士の間だから『よかった』だけど、
これがもし『非学会員』との間に起こった出来事だったら…。
なくなったのが、うちの両親だったら、彼らはなんというんだろうか…。」
と思ったら、こわい、と思ったらしい。
一瞬でも、旦那さんの家庭の意向と対立したこともあるが故に、なおさら。
Hは、妹さんの家庭に波風を立てるつもりも、
ご両親に無用な心配をかけたりする気もないし、
旦那さんのご両親に対するお悔やみの気持ちも持っているから、それ以上は口に出さなかったけど…。
「あくまでも、私がその時一瞬考えただけで、
本当に何か言われたとかされたわけじゃないから…。」
と、断りながら、ちょっと疲れた顔をして語った彼女の、
飲み込んだ言葉は、音として発しなくても私には大きく響いた。
やっぱり、想像してしまうよね。
逆の立場。
多分、私があなたの立場でも、同じように考えたと思うよ。
そして、言葉を飲み込んだと思う。
この気持ち、Hの妹さんの旦那さん、それから私の元カレも、わかってくれるかな…。